30億円の資金調達PRプロジェクト、担当メンバーに当時を振り返ってもらったら?

2024年9月9日、Nstockは30億円の資金調達を実施し、その直後から2週間にわたって複数のコンテンツをリリース。さらに、フルリニューアルした採用サイトも公開されました。

この「調達PRプロジェクト」を率いたのは、マーケティングの松田佳大(minmin)とデザイナーの上谷真之(utmy5)。

実は2人とも、資金調達に関連したプロジェクトを担当するのは初めてであり、このプロジェクトは3ヶ月という短い期間で進められたものでもありました。本記事では、minminとutmy5が、どのように職種の垣根を越えてプロジェクトを進めてきたのか、振り返ってもらいました。

当初のリリース日は8月。ギリギリのスタートだった

minmin:さっき調達PRプロジェクトを振り返るために社内Slackをさかのぼってみたら、キックオフミーティングをしたのは2024年4月15日でした。こんなにも早くスタートしたっけ?と驚きました(笑)。

utmy5:たしかにね。もうぜんぜん記憶にない(笑)。

minmin:このミーティングでは、僕がざっくりと「こんな方針でやりたい」という提案をしたんですけど、そこから時間が空いてしまって。結局、本格的に動き出したのが5月初旬になっちゃったんですよね。utmy5さんが「そろそろ動かないとだよ」と火をつけてくれたんですけど、覚えていますか?

utmy5が調達PRを推し進めるために投稿したSlack文面
utmy5が調達PRプロジェクトを推し進めるために投稿したSlack文面

utmy5:それはめっちゃ覚えていますね〜。最初のMTGで話していた「やりたいこと」を整理し、さらにスケジュールを逆算してみたら、意外といろんなコンテンツの期日がギリギリだと気づいたんです。特に、今回は採用サイトをフルリニューアルする予定だったので、すぐにでも制作を開始する必要がありました。

この時点では、自社コンテンツやプレスリリースを出すのみという最小限の打ち手に留める選択肢もありました。そもそも想定している量に対して手が足りていないと思っていたし、他に優先すべきこともたくさんあったので。ですが、僕とminminさんで具体的な打ち手を話し合っていくうちに「やっぱり大きく仕掛けたほうがいいよね」という共通認識が生まれました。

その共通認識が生まれてからは、調達PRプロジェクトの進行スピードがぐっと上がりました。minminさんがコンテンツ全般、僕が採用サイトのフルリニューアルといった感じで役割分担をし、同時に「他に何かできることはないか?」とアイデアを出し合いながら調達PRプロジェクトを進めていきましたね。

(写真左から)utmy5とminmin

minmin:そうでしたね。このあとにお話ししますが、調達PRの目的を深めていくにつれて、「この機会を最大限に活かす方法を考えよう!」と火がつきましたよね。

当初は、8月前半に資金調達を実施する予定だったので、準備期間は3ヶ月も残されておらずギリギリでした。でも、結果的にリリースが9月9日に変更されたことで、少し余裕も生まれ、少数精鋭の体制ながら手数が増やせたのではないかと思います。

調達PRの狙いは「ストックオプションの会社」というイメージからの脱却

minmin:調達PRプロジェクトの方針を考え始めた頃……5月中旬くらいですかね。まず僕が大切にしたいと思ったことは「調達PRの目的をシンプルにすること」でした。

というのも、昨今は調達ニュースがとても多く飛び交っていて、同時にさまざまなコンテンツがSNSで流れてきます。4〜5年前なら斬新だった「資金調達の裏側の解説」という記事コンテンツも、今ではもう当たり前のようになってきましたよね。そんな中で、あれも!これも!と発信しても、「目が滑っちゃって届かないんじゃないかな?」と思って。

そんな背景から、今回の調達PRは、Nstockで最も経営課題になっていた「エンジニア採用を最大化すること」に目的を絞りました。

また、この目的を達成するために必要だったことが、Nstockのイメージを「ストックオプション(以下、SO)の会社」から「スタートアップエコシステムをブーストする会社」へと変化させること(パーセプションチェンジ)でした。これは当時……いや、今でも採用活動において課題になることが多かったんです。

utmy5:パーセプションチェンジの必要性は、資金調達前から社内でもよく話し合っていましたね。創業当時から、NstockはSOをはじめとした株式報酬をテーマにしたコンテンツをたくさんリリースしていたこともあり、良くも悪くも「SOの会社」という印象が付きすぎてしまっていて。そうなると、当然ですが「SOに原体験や関心がない人」はなかなかNstockに振り向いてくれないんですよね。

当時を振り返るutmy5

minmin:そうですよね。でも、社内のエンジニアに入社理由を聞くと「スタートアップエコシステムに貢献したいと思ったから」「スタートアップが好きだから」という声がとても多い。つまり、Nstockの事業は一見するとわかりづらいけど、しっかりと理解できると「スタートアップを良くしたい」と願う人に魅力を感じてもらえるんですね。

Nstockの「外からの印象」と「実際の入社理由」の間には大きな溝がある。だからこそ、「SOの会社」というイメージを刷新する機会として、資金調達はとてもいいタイミングだと思ったんです。

実際に、資金調達後にリリースしたコンテンツを横並びにしてもらうと「スタートアップ」という言葉がとても多く使われていることに気づいてもらえると思います。逆に、「SO」というワードはできる限り減らす努力もしましたね。

utmy5:あとは、採用ファネルの整理も時間をかけて行いましたよね。資金調達当日〜3日目くらいまでは、知名度のある宮田さんをたくさん露出してNstockを“認知”してもらう。4日目以降は、事業部を率いるメンバーが具体的な事業展望の話をして、より深い“興味”を持ってもらう。最後は4週連続で採用イベントをする、といったかたちでした。

minmin:ここだけの話、実は直前までは、トータルで“3週間連続”でコンテンツをリリースしようと思っていたんですよね。でも、utmy5さんと「もしかしたら長すぎて飽きられるかも?」と急遽2週間に短縮したのです。僕、この判断は本当に良かったと思っています。モメンタムを持続させるには、2週間がちょうどいい期間でしたね。

「いざ、」に込めた、Nstockらしいスタートアップとの関係性

utmy5:調達PR全体の方向性を決めるのと並行して、採用サイトの制作も動き始めました。いろいろとこだわった部分はありますが、特にキャッチコピーについてはかなり議論をしましたね。

もともと、今回新しく制作するコピーは「Nstockはこんな会社です」と自己紹介になるような表現にしたいなと思っていました。たとえば、YOUTRUSTさんの「日本の人材流動性を加速させる」というコピーは、何を目指している会社なのかがパッとわかってめっちゃ良いよね、とよくminminさんと話していましたね。

参考にさせてもらったYOUTRUSTさんの資金調達時(シリーズCラウンド)のコピー

minmin:ですね。先述したとおり、僕たちはパーセプションチェンジを図っていたので、このコピーで「スタートアップを良くする会社なんだ」とパッと理解してもらえるといいな〜って、話していましたね。

utmy5:でも、実際に進めてみると、Nstockには「株式報酬SaaS事業」「セカンダリー事業」「再投資事業」と3つの事業があり、これをひと言でまとめるのは難しくて。そこで、抽象度を1つ上げてキャッチコピーの位置づけから再定義してみた結果、「いざ、スタートアップ。」が生まれました。

「いざ、スタートアップ。」のキャッチコピー

minmin:キャッチコピーは制作会社の方々に協力してもらって作ったのですが……最終的にどれくらいのコピー案を出してもらったんでしたっけ?

utmy5:15〜20案ほどありましたね。細かいニュアンスにまでこだわった結果、リリース2週間前にやっと決定しました。

minmin:特に「スタートアップとの関係性」の表現については、よく議論しましたよね。

utmy5:そうですね。早い段階で「スタートアップに伴走する」という表現を用いることは決まったのですが、じゃあそのニュアンスは「スタートアップとともに」なのか「スタートアップを導くように」なのか、はたまた「スタートアップを後押しするように」なのか……。

Nstockとスタートアップの関係性や距離感ってどんなものだろう?と根幹から考えていたので、ここに一番時間を費やした気がしますね。

minmin:「スタートアップを。」「スタートアップと。」「スタートアップに。」と、一文字変わるだけでニュアンスはかなり違ってきますもんね。このあたりは、僕以上にutmy5さんの強いこだわりを感じていましたね。

当時を振り返るminmin

utmy5:たしかに。Nstockはスタートアップエコシステムに貢献する会社でありながら、自身もスタートアップです。そのニュアンスを、キャッチコピーにうまく込めたいと思っていましたね。

そういう意味では、「いざ、」はとてもいい表現でした。周りに対して「一緒に進もう!」と声をかけているニュアンスもあるし、自分を鼓舞しているニュアンスもある。

minmin:わかります。「いざ、スタートアップ。」のなかに「Nstockがスタートアップするぞ」と「スタートアップみんなで盛り上がっていくぞ」の2つの意味が込められているところが気に入っています。

 ……そういえば、このダブルミーニングの話って、社内に一度も共有していないですよね?(笑)

utmy5:わざわざ言う必要もないかなと思っていました(笑)。でも、Nstockの社員みんなが、SNSの投稿でそれぞれの言葉で語ってくれている様子を見て、解釈にズレはなかったんじゃないかなと感じています。

minmin:みんなに伝わっているな、と嬉しくなりましたよね。あと、コピーと同じくらいキービジュアルを決めるのにも時間がかかりましたよね?こちらは8月後半まで迷っていたような?

utmy5:そうですね。悩んでいたポイントは「宮田さん1人にするか」「宮田さんと事業部のリーダーたちを含めた3人にするか」「あえて人物を出さずにグラフィックのみにするか」の3つでした。最初はパーセプションチェンジの意図もあり、「宮田さんと事業部のリーダーたちを含めた3人」の案が有力でした。

でも結果的に、宮田さん1人のキービジュアルにしました。その理由は、一番最初のリリースはとにかくインパクトが重要であり、その場合、今のNstockのブランドイメージをストレートに伝達するには、宮田さん1人の訴求が最適解だと考えたからです。シリアルアントレプレナーの強みを活かさない手はないな、と。

minmin:今振り返っても、これがベストな判断だったなと思いますね。宮田さんを主語に置いたおかげで「Nstockがスタートアップを良くする未来」という展望を、多くの人に認知してもらえたんじゃないかな?と感じています。

初めてのプロジェクトで試された「腹をくくれるか?」の覚悟

minmin:ここまで体系的に整理しながら語ってきましたが……、実際のところはそんなに綺麗に進められていたわけじゃないので、読者のみなさんには誤解がないようお伝えしたいです(笑)。

utmy5:そもそも、この人数でやる取り組みじゃないですよね(笑)。

minmin:ですね(笑)。とにかくカオスでしたし、「どうにか形になって良かった……」と今は安堵しています。

余談ですが、このプロジェクトを進めてみて印象的だったのは、utmy5さんの「メンタルの異常な頑丈さ」ですね(笑)。utmy5さんって「確認する・意見を聞く」というアクションが、かなり“後ろ”じゃないですか?僕もどちらかというと自分でがんがん決めて進めていくタイプなんですけど、utmy5さんはレベルが高すぎて学びになりましたね(笑)。

utmy5:そんなことありました?(笑)

minmin:ありましたよ〜!たとえば、採用サイトのデザインやコピーを代表の宮田さんやHRチームに見せたのなんて、リリースの2週間前くらいだった気がしますよ!僕は「ここでNG出たら後戻りがかなり難しいけど大丈夫か……?」とちょっとドキドキしていましたもん(笑)。

utmy5:今だから明かすのですが、宮田さんに共有するタイミングは見計らっていました!

minmin:そうだったんですか!

utmy5:もちろん、宮田さんやHRチームのチェックなしで進めるというわけではありません。ですが、早い段階から確定的ではないものをチェックしてもらっても議論の余地が広くなり、目指す速度と品質は出ないと考えていたし、むしろ本来守るべき軸がブレてしまう可能性があると思っていました。そのため、最低でも7〜8割ほど完成した段階でチェックしてもらうと決めていたのです。

採用サイトのビジュアルとキャッチコピーを初めて社内で共有したときのSlack投稿

minmin:いや〜、強いですね。たしかに、こういう大きなプロジェクトは関わる人が多ければ多いほど「安心感」はある反面、「スピード感」は落ちてしまう傾向にあります。採用サイトも2人で進められたからこそ、この期間でこだわりきれましたよね。

……という前提はありますが、utmy5さんの「メンタルの頑丈さ」には脱帽です(笑)。でも、この“頑丈さ”はスタートアップらしいと言いますか、Nstockらしさにもつながっていると思いますね。

utmy5:頑丈さ(笑)。いい表現やなぁ。言い換えるなら、「自分の意志決定に対して腹をくくる」みたいな感じですかね。

minmin:いいですね!「意思決定する勇気」とも言えそうです。僕はその勇気は持っているほうだと思ってNstockへ入社しましたが、上には上がいましたね……。

utmy5:十分、意思決定しているほうでしょ(笑)。

minmin:まだまだです。そういえば、utmy5さんはここまでの大きな調達PRプロジェクトは初めてだって言ってましたよね?僕も同じです。なんなら僕は金融業界も初めてで、スタートアップで働くことすらも初めてでした。だから、やっぱり意思決定する勇気はいつも以上に求められた気がしますね。

utmy5:そうですね。調達PRプロジェクトに限らず、今のNstockが該当するアーリーフェーズでは、少なからず自分がやらなければならない場面が多いですし。

minmin:これからは“頑丈人材”を目指して頑張っていきたいと思います(笑)。

もし、調達PRプロジェクトの立ち上げ時に戻れたら?

utmy5:もしも調達PRプロジェクトの立ち上げ時に戻れたら、やり直したいことはありますか?

minmin:この質問、何度も自問自答しているのですが、正直そこまで多くはありません。反省点があるとすれば「“最初の5日間のインパクト”をもっと大きくできればよかったな」でしょうか。

今回は2週間連続でコンテンツをリリースする、という選択をしましたが、ちょっと長すぎたかも?と思っています。後半は社内外ともに、やや飽きている雰囲気を感じていたので。やっぱり人間の集中力はそう長くは持続しないなって実感しましたね。

だからもし、また調達PRに関わることがあれば、もっと前半に大きな目玉企画を持ってきて、瞬間風速を最大化することに努めたいと思います。今はちょうどダイニーさんの調達PRが話題になっている頃ですが(取材時は2024年9月後半)、そんな他社様の事例もたくさん勉強して臨みたいですね!

ちなみにutmy5さんは、調達PRプロジェクトの立ち上げ時に戻れたらやり直したいことはあります?

utmy5:ない!

minmin:そうだと思った(笑)。

minminとutmy5
※「Nstockのラジオ #56」でも、資金調達PRの裏側について話しているので、あわせてお聴きください!

お知らせ

minminこと松田佳大が、ダイニーの広報PR・根岸紗菜さんとともに資金調達リリースについて語るイベントに登壇します。ぜひご参加ください。

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