「SmartHRの社長を退任します」という宮田さんの退任ブログを見て、ピーンと来るものがあったんですよね──。
そう語るのは、Nstockの“1人目”エンジニアである和田佳久さんです。
実は、和田さんはNstockで働くエンジニアのなかでもFintechスタートアップや金融系SIerで働いた経験を多く持つ存在です。個人投資家向けインターネット取引システムの開発にエンジニアやプロジェクトマネージャーとして関わったほか、Fintechスタートアップでは開発部門や、コーポレートIT部門の立ち上げなども経験しています。
そんな和田さんはなぜ、次のキャリアとしてNstockを選んだのでしょうか? Nstock代表である宮田昇始の退任ブログを見て「ピーンと来た」とはどういうこと?さっそく話を聞きました。
和田佳久(わだ・よしひさ)
金融系SIerやFintechスタートアップにて、エンジニア、プロジェクトマネージャー、開発組織の立ち上げなどを経験し、2022年4月に1人目の正社員としてNstockに入社。株式報酬SaaSのプロダクト開発に関わったのち、現在はセカンダリー事業のプロダクト開発や組織づくりに従事している。
SmartHR代表退任ブログを読み「ここで行かなきゃダメでしょ!」と即応募
──Nstockの創業は2022年1月、そして和田さんが入社したのは同年4月です。かなり早いタイミングだったと思うのですが、どういった経緯でNstockを知り、入社を決めたのかを教えてください。
宮田さんの「SmartHRの社長を退任します」という退任ブログがきっかけでした。次のチャレンジについて「SaaS + Fintech」としか書かれていませんでしたが、ピーンと来るものがあってすぐに応募フォームへ申し込んだのです。しかし、すぐに連絡はなく(笑)。諦めかけていたころに連絡があり、カジュアル面談や、芹澤さん(現SmartHR代表取締役CEO、芹澤雅人)や森住さん(SmartHR VP of Engineering、森住卓矢)らとの面接を経て、2022年4月にエンジニアとして入社しました。
──「SaaS + Fintech」だけの情報量で!? 宮田さんとはお知り合いだったのでしょうか?
いえ、僕は単なるイチフォロワーで、宮田さんやSmartHRのことをウォッチしていたんです。ただ、SmartHRが求める人物像と僕とではスキルセットが違うと思っていたので、採用ページへ応募をしたことはありません。

──でも、Nstockにはピーンと来るものがあったんですよね?それは、和田さんがこれまでFintechスタートアップや金融系SIerで働いていたことも関係していますか?
そうですね。実は、宮田さんの退任ブログを見たときは転職活動終盤で、すでにいくつかオファーをいただいている状況だったんです。ちなみに当時の僕は、転職活動時に重視している3つの軸がありました。
- ビジョン:会社のミッションや事業内容に共感できるか
- ヘルプ:これまでのキャリアや経験を踏まえた貢献ができるか
- メリット:働き方や経済的なメリットが確保されているか
この3つの軸をもとに考えてみても、Nstockはすべての要素が揃っていました。また、カジュアル面談を通じて、宮田さんもmachaさん(Nstock共同創業者、高橋昌臣)もSaaS事業に関わったことはあれど、Fintech事業のバックグラウンドがないこともわかりました。
宮田さんもmachaさんも「必要だから」と、Nstockを立ち上げ、株式報酬SaaSを皮切りにフルコミットでさまざまな事業を仕掛けようとしている。それを知ったとき、「Fintech業界でSaaSを開発する仕事がいい」というだけではなく、「ここへ飛び込んだとしたら?」「現職に留まることやいただいたオファーを踏まえて次のチャレンジを考えたときに、一番将来の予見が難しくてドキドキするような環境は?」と考えたんです。答えは明確で、「ここでNstockへ行かなきゃダメでしょ!」と思えたんですよね。
「セカンダリー事業をやります」というメンバーたちの覚悟を見て、自分も腹を括った
──その後、和田さんはNstockの“1人目”エンジニアとして入社したわけですが、やはり大変だったのではないかと想像してしまいます。入社してみてどうでしたか?
Nstockの第一弾プロダクトである株式報酬SaaSを早急に立ち上げていく必要があったので「これはハードになるぞ」と僕も思っていました。しかし、いい意味で裏切られましたね。なぜなら、心強いエンジニアが2人も立て続けに入社を決めてくれたからです。おかげで、1人で設計や開発を進める状態にはならず、3人の強みを活かしながら株式報酬SaaSを立ち上げることができました。
正直に言うと、僕はこれまでのキャリアで「エンジニアとしてプロダクトを世に出す」という経験が多くなかったんです。Nstockでは改めてそれをやると決め、実際に入社後はエンジニアとしてのスキルセットを広げ、深めることができました。そうやって、入社〜2年ほどは株式報酬SaaSの開発をしつつ、会社や事業の運営にも積極的に関わる日々が続いていました。

──和田さんは株式報酬SaaSの開発を経て、現在はセカンダリー事業の開発を担当しています。「Nstockがセカンダリー事業を始める」とは、いつごろ知ったのでしょうか?
カジュアル面談時に、宮田さんとmachaさんから「セカンダリー事業の構想がある」と聞いていました。なので、いつかはスタートさせる事業なのだという認識でしたね。
とはいえ、すぐに「株式報酬SaaSの次はセカンダリー事業だ!」となったわけではありません。Nstock社内では、さまざまなアイデアのなかから、セカンダリー事業を含め、株式報酬SaaSに続く「次の事業」を検討していたんですよね。僕はときどきその事業に関するシステム的な観点での相談を受けることはありましたが、そちらに深く入り込んでいくことはなく、引き続き株式報酬SaaSの開発を行っていました。
そんなある日、保管委託要件(SOの権利行使によって取得した株式の保管を証券会社などに委託しなければならないこと)が撤廃される方向性であることがわかり、これまで構想として聞いていただけだったセカンダリー事業が本格的に進み出すんです。
しかしながら、セカンダリー取引は株式という金融商品の売買にあたるため、すぐに事業を始められるわけではありません。売買を行う役員や従業員の方のUX/UIを損なわないようにしながらも、第一種金融商品取引業の登録要件を満たすための組織態勢やシステムも必要で、時間がかかります。場合によっては多額の費用が発生するかもしれません。それでも、セカンダリー取引はスタートアップにとって確実にあったほうがいい。そこへ“あえて”挑むと宣言したメンバーたちを見て、僕の気持ちも揺さぶられました。「自分も腹を括ってセカンダリー事業に挑もう」と考え、チーム異動を志願したのです。

──覚悟を決めたメンバーの姿を見たことが、セカンダリー事業へ挑むきっかけになったんですね。
それに加えて、僕自身がストックオプション(SO)を放棄した経験があったことも大きな理由です。会社のことが好きで、事業成長にも貢献したと言える成果を出したつもりではあるんですが……退職によってSOが残らなかったというのはやはり切なさを感じます。SO放棄によってそのような思いをした人は、少なくないのです。この事業には、そういう人たちを減らしたいという気持ちが込められていると思います。
それに、僕は過去に個人投資家向けのインターネット取引システムの開発に従事していた経験もあります。当時の経験は浅かったのですが、今思い返してみれば何から何までよくできていて、「あれを少しでも再現してよりいいものに昇華させてみたい」とも思いました。なので、「僕がやりたい、僕がやらなければ」という気持ちが芽生えたことも大きいですね。
「株式取引所づくり」は、エンジニア経験を総動員して挑めるチャンス
──改めて、Nstockのセカンダリー事業について教えてください。
Nstockの「セカンダリー事業」では、「役員や従業員がSOを行使して取得した株式を非上場時点でも売買できること」を目指しています。特に、次のような3つの要素で、国内非上場スタートアップの株式売買を実現させるプラットフォームを作り上げていこうとしているのです。
昨今、じっくり時間をかけて事業を成長させてから上場する企業が増えつつあります。そうすると、SOを行使できるのが10年後になったり、行使期限を迎えてしまって行使できない状態になる人も出てきたりします。また、スタートアップには「0→1」が得意な人、「10→100」が得意な人などさまざまな方が在籍しています。SOを行使できるタイミングを待つまでの間に、ご自身の得意・好きなフェーズが終わってしまうのはとてももったいないことです。セカンダリー取引を実現することで、こういった我慢や不幸を減らすことができます。
ほかにも、一時的に出費が発生するようなライフイベントにあわせて将来のキャッシュポイントを前倒しするといった使い方や、レイターステージで将来性を感じて入社した方にとって付与される機会の少ないSOの代わりに自社株式を保有する機会を提供するといった使い方も可能になります。これらを実現するのが、僕たちが作ろうとしているスタートアップのための非上場株の株式取引所なのです。
──「株式取引所を作る」とは、なかなかインパクトがある言葉ですね。
確かに、「株式取引所を作る」と聞くと、難しく思われてしまうかもしれません。しかし、システムの中身を一つひとつ紐解くと、そうではないところが見えてきます。
──思っているよりも難易度は高くないということですか?
もちろん、大事なお金を扱う場になるので堅牢性は求められます。ですが、証券取引所を1つのサービスとして見てみると、「注文を出して取引が成立する」という動作は、いわゆるマッチング機能であることがわかります。さらに、発行体がセカンダリー取引を準備する画面は、マルチテナントSaaSの要領でアプリケーションを構築していくことになります。やろうとしていることは壮大に思えるかもしれませんが、その中身はすでにある技術やアイデアを組み合わせたものだと言えるのです。セカンダリー事業では、そういったすでにある技術やアイデアから適切なものをNstock目線で選び、仕立て直していくことも大切になります。言い換えれば、エンジニアとしての経験の多くを活かすことができるチャンスです。

しかも、この事業にエンジニアとして関われば「自分は株式取引所を作ったことがある」と職務履歴書などに書けることになります。そういうキャリアを持つエンジニア、なかなかいませんよね?こうやってスタートアップエコシステムをブーストすることに貢献できたエンジニアは、他のスタートアップから認められるだけでなく、転職市場におけるマーケットバリューの向上にもなったらいいなと思っています。
──和田さん、楽しそうです。
Nstockではまだ世の中にないものを作ろうとしているので、楽しいですね。先ほどお話ししたとおり、僕はもっと「どうなっているかわからないくらいの環境」へ飛び込みたかった。そういう意味でも、Nstockは一番先が読めなくていいと思ったわけですが、今のところその読みは当たっています(笑)。
セカンダリー取引というテーマも、僕のこれまでの経験や培ってきたスキルを総合して挑む対象としてこの上ないものです。やりたいことはたくさんあるし、ちゃんとやりきりたい。ようやく開発が始まるところに来ましたが、Nstockのセカンダリー事業を世の中に送り出して「これを作りました」と胸を張って言えるようにしたいですね。

